2019年10月18日金曜日
一長一短
身体運動全般、特にスポーツ等高いパフォーマンスが要求される運動では、より柔軟性は重要になってきますが、武術においても例外ではありません。武術の視点で見た場合、主な効能では難度の高いパフォーマンスの向上、怪我のリスクの軽減等が挙げられますが、その反面、多分に私の経験や観察による主観的考察では、特に高い柔軟性を持った人に陥りがちな事として発力の爆発力不足が、往々にして起こり得るという事です。通備門では下盤(腿法)の準備運動・基本功として直擺性腿法、上盤・中盤の通備拳基本功(左右単劈手等)の段階から爆発力を求め、直擺性腿法のみならず通備拳の身法(最大最小の運動)を身に付ける基本功でも高い柔軟性が必要になってくるのですが、例えば正踢腿をする時、柔軟性が高い人は容易に最も高い位置に蹴り上げる事が出来、そうでない人は同じように足を蹴り上げるのに相当の爆発力が要ります。その為、柔軟性の低い人は自然と爆発力がないと蹴り上げられないという事になるのですが、柔軟性の高い人は爆発力を必要とせずともそれなりのスピードで高く蹴り上げる事が出来るので、その感覚を知る事なくただの柔軟運動になってしまっている事が少なくない様です。これは上・中盤の功夫(擰腰等)でも同じで、当然全ての人に当てはまる訳ではないのですが、柔軟性の高い人は折角の好条件(素質や努力で得たスキル)がある種の練習を容易にさせ、必要なもの(この例では爆発力=発力)が無いという可能性が出てくる一方、柔軟性が低いという不利な条件が必要なものを自然と身に付けさせるという様に、どのような条件でも大きな視点で見れば一長一短の面があるのです。武術を志す人達は各人十人十色の好条件を持っていますが、容易にある事ができてしまうと、慢心してその事を深く追求せず惰性で練習しがちになり、折角の好条件も活かすことが出来ません。各人が様々な目的や目標を持って武術に携わってますが、もし少しでも今よりも高い境地を目指し追求するのであれば、今回例に挙げた基本功である正踢腿1つでも例えば柔軟性という長所短所それぞれの条件が違うスタートでも、その先には馬鳳図先生がなし得た正踢腿の上乗の功夫に到達する事も出来るでしょう。
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